プリベントデザイン PREVENT DESIGN|ドローン・防災・警備・自治体・官公庁向けコンサルティング

自治体のためのクマ出没対応、未来に向けた「標準プロセス」と「初動の情報収集」の考え方

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2025年12月12日

来年度に向けて多くの自治体が直面するのは「体制の作り方が地域ごとに違う」という現実です。 委託や広域支援に委ねる地域もあれば、できる範囲で内製化しようとする地域もあります。 そこで重要になるのが「どの体制でも共通して機能する“標準プロセス”を先に整える」ことです。 プリベントデザインでは自治体・官公庁の現場で使える形(運用・周知・訓練)に落とし込みながら「まず情報を整える → 判断する → 住民の安全行動につなげる」を軸に設計していく考え方をご提案します。

1)自治体の「3つの運用モデル」
自治体の出没対応は概ね次の3タイプに分かれます。 どれが正解というより地域資源に合わせて“破綻しない型”を選ぶのがポイントです。
A:外部依存型(委託・応援中心)
自治体は「受付・周知・現場調整・記録」が主軸。 外部の実働と“つなぐ力”が成果を左右。
B:内製型(庁内・指定管理・地元組織で運用)
平時の準備(手順書・研修・役割分担・安全管理)がないと繁忙期に崩れやすい。
C:ハイブリッド型(平時は内製、難事案は外部)
実務上もっとも採りやすい。 通常運用は軽く増勢が必要な時だけ外部につなぐ。

2)“まず整えるべきこと”は「連絡体制・方針・研修」
環境省の「クマ類の出没対応マニュアル(改定版)」でも出没に備えるための要点として、すみ分け(ゾーニング)、連絡体制、対応方針、研修・人員配置、出没防止、予測、学習会などが整理されています。 つまり来年度に向けて自治体がやるべき優先順位は「現場の強化」だけでなく運用の骨格づくり(誰が・いつ・何をするか)です。

3)自治体が持つべき「標準プロセス」
体制がA/B/Cどれでも最低限この流れを“共通手順”として持つと、判断が速くなり周知がぶれにくくなります。
<標準プロセスの例>
1:受付(住民・警察・関係者)
2:一次確認(場所・時刻・状況・証拠の有無)
3:危険度の仮判定(学校・通学路・人流・継続目撃)
4:周知(速報→更新→解除のルール化)
5:現場調整(関係機関連絡、立入抑制、巡回)
6:必要に応じた“初動の情報収集”
7:対応(追い払い・捕獲等):※権限・法令・地域ルールに基づく主体が実施
8:記録(時系列・判断根拠・周知文・対応ログ)
9:振り返り(PDCA)→次年度へ改善
クマ類の保護管理では、モニタリングと評価を踏まえて改善していく順応的管理(PDCA)の考え方も示されています。

4)「まずドローンで情報収集」
局面が割れるほど(外部依存/内製/混在)、最初に必要なのは“状況の共通理解”です。 この“共通理解”を素早く作るために初動の情報収集としてドローンを組み込む考え方は、非常に実務的です。
<ドローンの役割>
・目撃地点周辺の地形・見通し・人の動線(通学路、作業導線)を把握
・地上班が近づく前のリスク低減(安全な観察・俯瞰)
・関係者間で同じ状況を共有するための状況図(共通言語)づくり
・情報の錯綜を抑え、周知を一本化しやすくする
※大事なのはドローン活用を「駆除の代替」として語るのではなく、“情報品質を上げる初動手段”として位置づけることです。 これならどの運用モデルでも導入価値が揺れません。

5)「手動探索と自動航行」
地域によって好まれる運用は変わります。 そこで機能ではなく「運用上の強みで整理」しておくと合意形成が進みます。
<手動探索>向いている場面
・目撃直後のピンポイント確認
・複雑地形・林縁・見切れが多い場所
・対象が動く可能性が高い/現場状況が読めない時
<自動航行>向いている場面
・一定範囲を“抜け漏れなく”確認したい
・複数回の観測(同じ経路で比較)をしたい
・報告・振り返りに耐える記録性が必要
実務では最初は手動で状況把握 → その後に自動航行で面を押さえるなど、段階的に組み合わせる設計が現実的です。

6)「自治体でのドローン運用」
来年度の整備で最も差が出るポイントです。
6-1) <役割分担>
・指揮(意思決定)
・現場安全管理(第三者・立入管理・撤収判断)
・運航(操縦・監視)
・連絡調整(警察・教育・広報・委託先)
・記録(ログ、周知文、判断根拠)
6-2) <法令・手続き>
無人航空機の飛行には機体重量や飛行内容によって登録・許可承認等が関係します。 国土交通省は100g以上の無人航空機を屋外で飛行させる場合の「飛行許可・承認手続」や、オンラインのDIPS2.0を原則とする運用などを案内しています。 また、制度運用は更新され得るため、自治体運用では「年度内に一度、最新情報を確認する」ルール化が有効です。
6-3) <適用ルールの確認>
国の運用整理として「航空法第132条の92に関する特例適用の対象事例に獣害を未然に防ぐための飛行が追加」された旨の告知も出ています。 自治体としては「適用可否を独自に断定する」のではなく、ガイドライン確認・所管への照会も含めた運用手順にしておくと安心です。

7)周知は「地図と一覧」で助ける
周知が効く自治体ほど、住民に「どう行動するか」を迷わせません。 特定地域の事例に依存せずとも住民向けページを次のように設計すると、理解が進みます。
・目撃情報を 地図(位置)+一覧(詳細) で見せる
・「速報 → 更新 → 解除」の更新ルールを明記する
・住民が取るべき行動(誘引対策/外出時の注意/通報先)を、短く具体に書く

ご相談
プリベントデザインでは自治体・官公庁の皆さまからのご相談に応じ、初動フロー整備、役割分担(RACI)設計、周知テンプレ作成、机上訓練の設計、ドローンを含む情報収集の運用設計など、地域の実情に合わせた支援をご一緒に検討しています。 「来年度に向けて何から手を付けるべきか」「内製と外部支援の線引きを整理したい」など、ご相談ください。
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