「ドローン対策」は装備ではなくオペレーションから
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2025年12月6日
重要施設やイベント会場の上空で不審なドローンがホバリングを始めたとしたら。 現場では、どんな指示が飛び、誰が何を基準に動くべきでしょうか。 日本ではテロ対策や要人警護、重要インフラ防護の観点から「相手ドローン対策」「カウンタードローン」に対する関心が年々高まっています。 一方で自治体・官公庁・重要施設の担当者の方と話をすると「法律は読んだが実際に不審ドローンが来たときのイメージが湧かない」「自分たちが飛ばす業務用ドローンと相手ドローン対策が別々の議論になっている」「展示会で装備は見たが自組織のオペレーションに落とし込めていない」という声も少なくありません。
プリベントデザインではドローン活用・防災・防犯・コンプライアンス・自治体支援を束ねたタクティカルなコンサルティング事業として「装備より先にオペレーションを設計する」ことを一貫して重視してきました。 社名の「プリベントデザイン」は、しばしば一般的なデザイン会社と誤解されますが、私たちが込めているのは prevent(防ぐ/妨げる/阻止する)を design(描く・計画する) という意味です。 「起きてから対処する」のではなく、起きる前から防ぐための仕組みを設計する、その考え方がすべての出発点になっています。
本記事では、相手ドローン対策を 装備だけの問題にしないための考え方 を整理します。
⚫︎相手ドローン対策に【装備だけ】では向き合えない理由
海外の展示会やSEECAT(テロ対策特殊装備展)などに行くと、レーダー、RF探知機、ジャマー、ネット銃など、カウンタードローン関連の装備が数多く並んでいます。 しかし、日本の法制度や運用環境を前提にすると、自治体や民間施設が単独で取れる行動には、どうしても制約があります。
・電波妨害や撃ち落としのような「強制的な無力化」は法制度・安全性の観点から現実的な選択肢になりにくい
・小型無人機等飛行禁止法で、重要施設周辺の違法飛行に対する警察権限は整備されつつあるが施設側・自治体側の役割は「早く気づき」「正しく通報し」「証拠を残す」ことが中心
つまり、多くの現場にとっての現実的な「相手ドローン対策」は、早期に気づく(探知・認識)、関係機関に正しくつなぐ(通報・連携)、必要な証拠を残す(記録・保存)というオペレーションの整備 が本丸になります。 それにもかかわらず「どんな装置を入れるか」から議論が始まってしまうケースは少なくありません。
⚫︎まず整えるべきは【自分たちのドローン運用】
相手ドローン対策の話に入る前にプリベントデザインが必ず確認するのが、自組織のドローン運用がどこまで設計されているかです。 自分たちのUAV運用が標準化されていない組織ではどこからが「異常」なのか、境界線が曖昧になりがちです。
「任務プロファイルを明文化する」
どの任務で、どの時間帯に、どの高度帯を、どのエリアで飛ばすのか、を文章・図で整理しておくことでこのエリアに、この時間に、味方機は存在しないはず、という前提を作ることができます。
「操縦者の技能を“感覚”ではなくスコアで把握する」
プリベントデザインではNIST STMに準拠した評価コースを用いて、ホバリング・狭所侵入・精密着陸などの技能をスコア化します。 どの任務にどの操縦者を投入できるか、誰に追加訓練が必要かが数値で見えると、有事のときに安全に飛ばせる人材が誰かが明確になります。
「運用ルールと記録様式を統一する」
飛行計画、許可、承認のフロー、立入管理、安全確保の方法、映像、ログの保存期間、管理責任者、これらを標準化しておくことで、相手ドローンが現れたときに味方の飛行記録と照合し、誤認を減らすことができます。
⚫︎相手ドローン対策を【見張る・つなぐ・残す】で組み立てる
自組織のUAV運用が整理されたうえで、相手ドローン対策を 3つの機能 に分解して考えます。
①見張る(探知・監視)
・リスクの高い施設やイベント会場周辺の「空のリスクマップ」を作成
・既存の監視カメラ、警備動線、照明環境を踏まえ必要に応じて以下を組み合わせる
>ドローン探知システム(レーダー・RF探知など)
>係留型ドローンによる上空監視
>高所に設置した固定カメラ+AI解析
ポイントは「どこから侵入されると困るのか」を地図上で可視化したうえで、見張り方を設計することです。
②つなぐ(通報・連携)
・「何をもって不審と判断するか」をルール化
>高度・距離・滞空時間・進入方向 など
・不審ドローンと判断した場合の通報先・段階
>施設内の指揮系統
>自治体の危機管理部門
>警察・消防・関係機関
ここで重要なのは、誰がその判断を行うのかと「この条件を満たしたら、迷わず通報してよい」という 閾値を明文化しておくことです。
③残す(記録・保全)
・カメラや探知システムの画面をスクリーンショット・動画で保存
・飛行の時間・位置情報・被害の有無などをレポート化
・保存期間・保管場所・閲覧権限をあらかじめ決めておく
相手ドローン対策の現場では「そのとき何が起きていたのか」を 後から第三者に説明できるかが重要になります。
⚫︎【飛ばす・見張る・残す】を分けずに設計する
相手ドローン対策のプロジェクトを、自組織の業務用ドローン運用とは別枠で進めてしまうと、探知システムが味方のドローンまで警報を出し、現場が混乱する。 防災・点検で飛ばしているドローンの飛行ログと結びつかず、“異常”の切り分けに時間がかかる、といったすれ違いが起こりがちです。
プリベントデザインが重視しているのは、
「飛ばす(タクティカル運用)」
>GPS OFFでのマニュアル操縦
>FPVによる閉所偵察
>NIST準拠の技能評価
「見張る(探知・監視)」
>係留型ドローンによる俯瞰監視
>固定カメラ+AI解析
>ドローン探知システムの運用設計
「残す(記録・コンプライアンス)」
>ログ・映像の標準フォーマット
>プライバシー配慮・説明責任
>関係法令に沿ったデータ管理等をひとつのオペレーションとして統合することです。 たとえば、昼間は自組織の業務用ドローンでインフラ点検、夜間は係留ドローン+カメラで周辺監視、どちらのログも同じ管理ルールで一元管理し、不審飛行があれば自分たちのログと照合して即座に「相手」かどうかを判断する、といった運用を、最初から一体として設計します。
⚫︎プリベントデザインが提供する【支援のイメージ】
プリベントデザインでは次のような流れで支援を行うことができます。
1)現状ヒアリング・リスク評価
・施設・地域の特性、既存のドローン運用、監視体制を確認
・リスクマップと優先順位の整理
2)オペレーションデザイン
・任務プロファイル・技能要件・通報フロー・記録ルールを設計
・「飛ばす/見張る/残す」を統合した運用案の作成
3)タクティカル訓練・評価
・GPS OFF・FPV・閉所偵察・NIST評価コースなどの実技訓練
・通報訓練・机上演習(テーブルトップ・エクササイズ)
4)レビュー・アップデート
・年次訓練や実際の事案発生を踏まえた改善提案
・装備更新やシステム導入が必要な場合の検討支援
ここでも「prevent×design」という社名の通り「防ぐ」を中心に据えたオペレーションそのものをデザインすることが、私たちの仕事です。
⚫︎相手ドローン対策は【設計】から始める
相手ドローン対策やカウンタードローンという言葉は、どうしても装備やシステムのイメージと結びつきがちです。しかし、自治体・官公庁・重要施設にとって本当に必要なのは、自分たちのドローン運用を標準化し、相手ドローンを「異常値」として捉えられる基準を作り、見張る・つなぐ・残すというオペレーションを整備することです。
プリベントデザインという社名には「防ぐ(prevent)ことを意図的にデザインする」 という意味を込めています。 起きた事案に対応するだけでなく事前の設計と訓練によって、被害そのものを減らす・起こさせないための仕組みをつくること、それが私たちの目指すところです。
・すでに配備しているドローンを、相手ドローン対策の基準にもなる「味方」として活かしたい
・これからドローン探知システムや係留監視を検討するが、どこから設計すべきか悩んでいる
そんな段階からで構いません。
相手ドローン対策は装備からではなくオペレーションから。
その設計の部分を一緒に組み立てていくパートナーとしてプリベントデザインがお役に立てれば幸いです。
https://prevent-design.com/contact
